01.05.14:41
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02.11.19:14
煉獄と信愛なるあなたは
文庫版「それでも神話は生誕するのか-from Abroad-」に掲載されていた短編です
煉獄と信愛なるあなたは
「おかえりなさい」と言うだけで得られる喜びがたくさんあった。
言えなくなってしまった今もまだ、空白な心の中に残り香だけが漂っている。
知らない言葉を教えてくれた優しい声も、繋いでくれた大きな手の平から伝う温もりも、共に生きた証だった胸の鼓動も、その音も。
覚えています。感謝しています。
この寒空の果てにある、遠い遠い何処かにいるあなたの幸せを祈らせてください。
真っ暗な部屋をストーブの赤い光が照らしている。光の中から聞こえる何かが焦げるチリチリとした音を聞きながら、何も置かれていないテーブルの真ん中を見つめていた。眠さと寒さで意識がうとうとと微睡み始めたころ、玄関のヘッドライトが白く点滅したのを見た。途端に跳び起きて玄関へ駆け寄り、扉についていた三つの鍵を一つずつ外した。最後にガチャリと扉を開けて、言う。
「おかえりなさい!」
玄関先に立つ大きな人影を見上げると、微かに光る深緑色の瞳と目が合った。
「ただいま」
白い吐息がふわりと浮かんで宙に消えた。
彼はそれだけ言うと目を逸らし、俺の横を掠めるように過って部屋の中に入って行った。その背中を追いかけて部屋の真ん中まで戻ると、彼がテーブルの上に一つの紙袋を置いているのを見た。雪を被った重たいコートを脱ぎながらこちらに視線を送る。あれは「こっちに来い」というサインのはずだ。その通りに近づいてテーブルの席に座ると、目の前に一枚の皿を敷かれ、その上に紙袋から取り出した茶色い包みを乗せられた。開けてみると中には大きなサンドイッチが一つ入っていた。柔らかいパンに野菜がギッシリと挟まった美味しそうな食べ物だった。
「今日も遅くなってしまったな」
テーブルを挟んだ向かいの席に座った彼が、申し訳なさそうに呟いた。
「ううん……ありがとう」
彼がいつも忙しそうにしていることは知っている。感謝はすれども不満なんて持つわけがない。
彼は命の恩人であり、同時に憧れの人だった。恰好よくて、頼りになって、優しくて。そんな素敵な人が無力な自分を拾い上げて助けてくれたことが嬉しかった。とてもとても嬉しかった。
魅力的で誰もに必要とされる彼が、多忙な時間の合間を使って仮屋で待っているだけの俺に柔らかいパンをくれる。出会ったばかりでロクな恩返しもできない赤の他人にだ。世間知らずで頭もよくない俺だけど、それがとても素晴らしいことだということくらいは解っているつもりだった。
口を目一杯開きながら大きなサンドイッチに齧りついていると、彼がその様子をずっと見つめていることに気付いた。
「どうした?」
食べるのを止めてソワソワしていると、普段とは少し違う声色で尋ねられた。
「その……食べている所を見られるのって、恥ずかしいよ」
「何故?」
「……どうしてだろう?」
理由はなんとなく解る……はずなのに、言葉にするのがなんだか怖くて黙っていた。
しばらく空白の時間が流れたが、やがて彼の方が席を立って離れてしまった。その背中を見送りながら、(シャワーを浴びに行くんだろうな)と、ぼんやり考えていた。
ガチャリとドアノブを捻る大きな音が鳴って顔を上げると、少し離れた脱衣所の扉から彼が出てくるのを見つけた。彼もまた俺の姿を見つけると、ほんの少し目を見開きながら俺の側に歩み寄ってきた。
「こんな寒い所にいては駄目だろ? どうして部屋から出たりするんだ?」
こちらを見下ろす彼の視線が心苦しそうで、悪いことをしてしまった気持ちになった。何か返事をしなきゃいけないのに、自分でもなんでこんな冷たい床の上に裸足で立っているのか解らなくて、首を傾げることしかしなかった。
彼はそんな俺の頭をそっと撫でる。指先が少し震えてぎこちないのは湯上りの肌寒さが悪いのだと思った。
「傍にいてやれなくて、すまない」
彼は眼を細め、重く湿った溜め息のような言葉を吐く。
(ああ、またこの顔だ)
笑っているのか泣いているのか分からない、彼に出会うまで見たことのなかった不思議な表情。人はどんな時にこの表情をするのだろう。何を思ってこんな、泣き出しそうな笑い方をするのか。わからないのに、見ていると哀しい気持ちになる。
きっと彼は苦しんでいる。そして、この気持ちが勘違いでないのなら、彼の苦しみの原因は自分なんだ。
俺は黙って首を横に振った。謝る必要なんて無いんだと言いたかった。
「俺は嬉しいよ」
もっと気の利いた良い返事は山ほどあるはずだった。彼を苦しめない言葉があるはずだった。けれど俺には彼の本当の気持ちがさっぱりわからなかったから、俺の思っていることしか伝えることができなかった。
「どうして俺を信じるんだ?」
「疑わなきゃいけないの?」
返した言葉に彼は戸惑い、湯上りで半乾きの長い髪を掻き上げながら額に手を当てる。顔半分を大きな手の平が覆い隠す。綺麗な色の髪の毛が額からハラハラと零れ落ちるのをぼんやりと見上げていた。
「その方が良い。その方が、ずっと楽に過ごしていられる。良いものと悪いものの区別を付けないままにしておけば、色々なものを許せるし、諦められる」
「そうなの?」
「……」
「でも、好きなもののことは信じてもいい?」
彼はフッと口を開くと、顔から手を放し、今度はしっかりとほほ笑んでくれた。
「それも大変だと思うぞ?」
「がんばる」
「そうか」
彼の笑顔を見ると心がほっと温まる。ずっと笑っていて欲しい。
「なあ、エッジ。明後日は用事が無いんだ。だから一緒に市場の方に出かけないか?」
「うれしい! あ、でも……外に出てもいいの?」
「いいよ。騒ぎも随分収まってきているから、俺と一緒にいれば大丈夫だ」
「そっか。ありがとう、フォルクスさん!」
「…………あぁ。楽しみにしていてくれ。それと、今日はもう遅いから寝なさい。体も冷えているぞ」
「うん。おやすみなさい!」
頭から離れる手に名残惜しさを感じたが、明後日になれば一日中一緒にいられる。
喜びと期待に胸を膨らませながら、暖かいベッドの中で眠りについた。
少し閑散とした市場の景色。久しぶりに感じる乾いた空気と張り詰めた寒さ。肌を切り裂く冷たい風が一つ二つと吹く度に、小麦粉みたいな粉雪がふわりと浮かんで視界を覆う。新品の長靴を大事に雪に沈めると足の裏から雪の温度がひんやりと伝わって来て心地よい。
彼に手を引かれながら歩く灰色の街並み。その間を行き交う厳めしい顔の兵士たち。兵士たちはフォルクスさんの姿を見ると必ず立ち止まり、力強く丁寧な敬礼をする。その度にフォルクスさんは労いの言葉を忘れなかったし、そんな彼に言葉を貰った兵士たちはほんの少しだけ表情をほころばせ、嬉しそうに感謝の意を示してから去っていく。
その様子を見る度に彼がたくさんの人から慕われていることを知ることが出来て、とても誇らしい気持ちになった。
そんなやり取りを何度か眺めていたら、ふと一人の兵士がフォルクスさんに問いかけた。
「教官。失礼ですが、そちらの子供は?」
驚いて被っていたフードの端を引っ張って顔を隠した。フォルクスさんはその様子をチラリと横目に見た後に、何食わぬ顔で返答する。
「俺の客人だ。何か問題でもあったか?」
「いえ! とんでもありません……失礼しました」
兵士は俺の方を奇異なものを見る目で眺めると、難しそうな顔をしてから速足で立ち去って行った。その背中が見えなくなった頃、ずっと繋いでもらっていた彼の手をぎゅっと強く握った。そのまま背の高い彼の顔を見上げる。
「見つかったらどうなるの?」
「全身の血を抜かれて剥製にされる」
「えぇ!?」
「冗談だ」
声色が正直すぎてちっとも冗談には聞こえなかった。
「……実際は、どうにもならないさ。エッジがまたアイツらに捕まるようなことがあったら、その時はまた逃がしてやるだけだ。俺にだってそれくらいの力はある。それくらいのことなら……」
「また、助けてくれるの?」
「約束する」
「そっか……じゃあ、安心だね!」
彼が約束してくれるならきっと大丈夫だ。思わず零れた安堵の笑顔を、彼は静かに見下ろしていた。
市場の一角にあるちょっと大きな日用品店。フォルクスさんと一緒に店内を見回して、歩き回って、必要なものを買い物カゴに入れていく。木製の食器にガラスのコップ、少し重たい金属のフォーク。毛皮のローブ、暖かそうなセーター、頑丈なベルト、ふかふかの帽子。大きなタオル、小さなハンカチ、ひざ掛け、クッション、枕カバー。お店の中には色んなものが置いてあって、見ているだけで楽しかった。
そんな中、店の隅の小さな棚に一つのぬいぐるみが置かれているのを見つけた。綺麗な柄の布でパッチワークされた、素朴な色をした可愛いぬいぐるみ。偶然見つけたその姿から目が離せなくなって、気付けばぬいぐるみの座っている棚の前でずっと見つめていた。
木の実の種をはめただけの丸い瞳が証明の灯りを反射してピカピカ光っている。
「ベア……いや、イヌなのか?」
気付けばすぐ隣に彼が立っていた。大きな体を少し屈めて視線の高さを合わせ、俺の顔とぬいぐるみとを交互に眺めた。そしてほんのり嬉しそうに口角を上げて尋ねる。
「欲しいのか?」
「ほしい?」
「そのぬいぐるみ。さっきからずっと見ているだろ?」
「可愛いから見ていたんだ」
そう言ってもう一度ぬいぐるみの方を見る。丸い輪郭と柔らかそうなキルト生地。花柄とタータンチェックの可愛らしい色。懐かしさを感じるあたたかな表情。とても素敵だった。
「買ったらずっと見ていられるし、好きなだけ抱きしめられる」
それはなんて魅力的なことだろう。
「でも、あの子は俺といっしょにいたくないよ。きっと」
「……………………どうして?」
ハッとして彼の顔を見た。不意に傷つけられた子供のような顔をしていた。
「……いや、すまない。エッジがそう思うなら、それでいいんだ」
声と表情が引きつっていた。無理をしているようにしか見えなかった。今の言葉の何がいけなかったのか、何が彼をここまで傷つけたのかわからなかった。背中がぞわぞわと冷たくなって、冷や汗が出て、頭の中が真っ白になっていった。
せっかく楽しいお出かけだったのに、俺はどうしてこんなことばかりしてしまうのだろう。
今すぐ彼の前から逃げ出したくなったのに、足が床に張り付いているように動かない。体が重い。指先はカタカタと震えているのに、口はちっとも動いてくれなくて、彼にかける言葉が何も出てこなかった。
「ただな、エッジ。一人より二人の方が良いと思っているかもしれない。だから好きだという気持ちがあったら、ちゃんと伝えてあげた方が良い」
彼はぬいぐるみを手に取ると、そっと俺に手渡した。
眺めていただけではわからなかった、ふわふわとした優しい手触り。思わずぎゅっと抱きしめると、あたたかな気持ちが心の中を満たしていく。込み上げるこの感情はきっと「愛しさ」というもの。
「お前に会えて嬉しい。ありがとう」
ぬいぐるみは何も言わない。黙ってこちらを見つめている。その木の実の瞳を見つめ返していると、ふと胸が締め付けられる心地がして、ぬいぐるみを棚の上に戻した。
そうやって振り返るとまた、彼が奇妙な顔をしていた。
「フォルクスさん?」
「……なんでもない」
彼は俺から目をそらすと、逃げるように店の奥へ行ってしまった。
またあの顔をしていた。どうしてだろう。俺はフォルクスさんのことがこんなにも好きなのに、どうして苦しめてしまうのだろう。いい子でいるはずなのに、大人しくしているはずなのに、ワガママも言っていないはずなのに。
どうして目を逸らされるのだろう? どうして別のどこかを見るのだろう?
俺には俺の悪い所がわからない。何が彼を悲しませるのかわからない。わからないなら直せない。
「ねぇフォルクスさん。俺は悪い子なの?」
そう尋ねることすら、彼を深く傷つけてしまうような気がした。
深夜、目が醒めると部屋の中にフォルクスさんの姿が無かった。一緒に帰ってきたはずなのに、どこにもいない。自分しかいない部屋の中が暗くて、冷たくて、広かった。
ベッドの中から抜け出して、毛布を一枚引きずりながら冷たい床板の上を裸足で歩いた。
カーテンの向こうから漏れる光につられて窓際に近づき、外を見る。真っ黒な空と月明かりを浴びた群青色の街並み。夜なんだな、と当たり前のことをぼんやり思った。
窓の前に椅子を一つ持ってきてその上に座り、毛布に包まりながら膝を抱える。窓の覗き込んで見える夜空には白くて丸い月が一つ。いつかに見た星の代わりに大地を照らす街灯り。静かなのにキラキラした夜の世界。
とても綺麗だと思った。そして、手の届かないものだと思った。
「欲しいって、なんだろう」
昼間出会った可愛いぬいぐるみのことを思い出す。
「わからないよ。誰も教えてくれなかった」
でも確か、母さんは父さんを欲しがっていた。いつもいつもこうやって窓の外のずっと遠い所を見ていた。俺には決して向けられたことのない、幼い少女のような顔。その瞳の先に立つことが目標だった。父さんを失った母さんの傷ついた心を慰めるのが俺の役割なのだと思っていた。
できなかった。足りなかった。そもそも俺が立てるような場所じゃなかった。
愛してるってなんだろう? 母さんが口癖みたいに言っていた「愛」という言葉の意味を、最後まで教えてもらえなかった。「愛」がそんなにすごいものなら欲しかった。
それがあれば母さんを助けられたの? 俺の心も楽になるの?
笑っていて欲しいんだ。母さんにも、フォルクスさんにも。そのために俺は何をすればいいんだろう?
何もできないならせめて、あなたの幸せを祈りたい。
「エッジ!?」
突然名前を呼ばれて振り返ると、玄関に続く扉の前にフォルクスさんが立っていた。暗がりで表情がわからないかったが、声から察するにとても驚いているようだった。
彼は足早に俺のすぐ側までやってくると、椅子の上で小さくなっている俺と目線の高さを合わせてしゃがみ込み、俺の顔をまっすぐに見つめた。
「寝ていると思っていたもんだから……勝手に出て行ってすまない。今日はずっと一緒にいるって約束したのに、俺は……」
「ごめんなさい」
「エッジが謝ることじゃない! 頼むから、オマエはもっと……」
彼の言葉が突然止まる。表情が固まって、それを正すために彼は勢いよく首を振った。「ちがう」と呟く微かな声が空耳みたいに聞こえてきた。
「……眠れなかったのか、エッジ」
少し震えた、けれどもとびきり優しい声色で彼は囁く。
「うん。起きちゃったんだ。そしたら部屋がとても寒くて」
「それでここに? そうか……でも、もっと暖をとらなきゃ体を壊すぞ? 待っていろ、すぐに……」
そう言って立ち上がり傍を離れて行く彼を見て、いてもたってもいられず椅子から飛び降りた。床の上を裸足で駆けて、遠ざかる彼の腕にしがみついた。外から帰ってきたばかりの冷たい手。それなのに何故だろう。心がほっとする。
彼は突然しがみついてきた俺の方に体を向きなおすと、もう片方の手で俺の頭を撫でた。
「エッジ……それは『さむい』じゃなくて、『さみしい』って言うんだ」
「さみしい?」
知らない言葉だった。
顔を上げると、彼がまたあの表情をしていた。
「どうしてそんな顔をするの?」
「え?」
しまった! と気付いたときにはもう遅い。思わず零してしまった本音の疑問を聞いて、彼は、フォルクスさんは、
「ごめんなさい!!」
悲鳴みたいな声が出て、腕を放してその場に屈みこむ。体を小さく丸めて、意味もなく頭を腕で覆った。彼の顔を見るのが怖くて、後に続く言葉を聞くのが怖くて、怖くて、とにかく謝らなきゃいけなかった。
「ごめんなさい!! ごめんなさい!!」
これはワガママだ。いけない、俺はまた彼を困らせている。その思うと辛くて、目に涙がにじみ出る。
おかしいな、もう泣かないって決めたのに。この人と一緒にいられるならいくらでも強くなれると誓っていたのに。ダメだ。涙がこぼれる。どうして……何がそんなに悲しいの? どうして、上手くいかないの?
「嫌いにならないで……」
顔が見られたくなくて、顔を見ることもできなくて、うずくまった足元に涙がぽたぽたと落ちていく。濡れた顔が冷たく凍える。
どうしようもない不甲斐なさでいっぱいいっぱいになって、混乱して、何もかもわからなくなってしまった俺を、彼はそっと抱きしめた。驚いて、ハッとして、それでも顔を上げられなくて、涙も止まらなくて。背中を撫でる彼の指も震えていた。押し付けられた彼の胸から、張り裂けそうな心臓の鼓動が聞こえた。
彼は悲しんでいる。なにもかもわからないのに、それだけはよくわかった。顔を見ていなくても今にも泣きだしそうなことが伝わってきた。
失敗してばかり。ダメなことばかり。苦しめてばかり。どうしてうまくいかないんだろう。
あぁ、でも……そうだ。こういう時には、誰かが泣きそうな時には抱きしめてあげればいいんだ。俺はそう、彼に教えてもらっていた。
震える腕で俺を抱きしめる彼の体をぎゅっと抱きしめ返した。
「エッジ……」
涙に震える彼が悲痛な声で俺の名前を呼んだ。
「俺はオマエを嫌いになったりしない。何があっても、絶対に。だけど俺は……俺には、オマエを……」
それ以上は何の言葉も出てこなかった。
そのままずっと、何も言えないまま抱きしめ合って、そのまま……
朝だ。いつのまにか眠っていた目を覚ますと、俺はベッドの中にいた。あまりに当たり前ないつもの朝の景色を不思議だと思って眺めていたら、昨日の夜のことを思い出した。
瞼が熱く腫れている。体も何となく重くて気怠い。部屋の中には自分以外に誰もいない。フォルクスさんがいない。
ふと、テーブルの上に何かが置いてあることに気付いた。ベッドから出て、恐る恐る近づいてみると……それは、あのぬいぐるみだった。
その傍には一通の置き手紙が添えてあった。
「 あなたに会えてうれしかった
だから そばにいさせてください 」
それ以来フォルクスさんは帰ってこなかった。
「おかえりなさい」は言えなくなった。「ただいま」も聞けなくなった。
これが「さみしい」という気持ちなんだと、初めて知った。
ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめれば、あたたかい気持ちが込み上げる。
「俺もうれしかったんだ。ありがとう」
あなたに出会えた奇跡があったから、あなたと別れた寂しさが忘れられなかったから、今も同じ夢を見ていられる。
「ただいま」と言われるだけで信じられる愛情が確かにあった。
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