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・・基本有言不実行・戯言駄文録・・・
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05.16.02:45

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  • 05/16/02:45

08.05.21:57

神頼み


03の散歩小説
グロテスクな描写が満載かもしれない(むしろそれしかないかもしれない)

少し前に書こうとして止まっていた作品をサルベージしてきました
なので突然終わります
出来れば完成させたいなぁって思ったのですが、何を思ってこんな文章を書いたのか思い出せません
なんだったんだろう……?










 それはちょっとしたきまぐれだった。いつもみたいに神殿を脱け出し、宛もなく下界をさ迷っていた時のこと。ふとこの辺りに奇妙な宗教観をもった集落があったことを思い出した。
 行ってみるとそこは戦争の真っ最中だった。みすぼらしいテントの住居はいつのまにか石造りの建築に変わり、しかしそれも遠方からの襲撃に遭い焼け焦げ、噴き飛び、見るも無惨に崩壊していた。瓦礫の陰には粉微塵になった人間が無数に転がっている。決して消えない魔法の炎に取り囲まれ、消し炭となって風に浚われる。
 かつての大通りだったらしい土地には、大きな穴がいくつも空いていた。周辺から流れ着いた泥水や人間の夥しい量の血が混ざりあい、真っ暗に濁った水溜まりを作っていた。そのグロテスクな様子を覗き込みながら、音もなく横を通りすぎる。
 すると今度は正面から数十人の人間が現れた。彼らは錆びだらけの槍を構え、何処かに向かって生真面目に行進している。こんな弱りきった町にいつまで本気で相手をしているつもりなのだろう。しかし立ち寄っただけの自分にはさして興味もない事情。ただ少しだけ暇が潰したかっただけなのだ。
 何もなかった大通りを通りすぎ、死体だらけの路地裏に足を運ぶ。見るからに臭そうな、腐乱死体と硝煙と糞便の入り雑じった景色。歩くだけで靴底が汚れるんじゃないかと杞憂してしまう気分の悪さがある。
 死体は頭が無かったり、逆に頭だけだったり。不自然に捩れているものもあれば、腸を撒き散らかしながら道を塞いでいるものもいた。脳味噌がはみ出している。瞳孔の開いた眼球が真っ赤に染まっている。体の一部が削れていたり、胸から下が骨だけになっている死体が幾つかある。この悲惨な戦地に追い打ちをかけるように、手練れの魔獣でも紛れ込んで暴れていったのだろう。だとしたらさっきの軍隊はその討伐が目的なのだろうか。災いを呼ぶのは何処のどいつだというのどろう。
 がさり
 骨の一本でも蹴飛ばして遊んでいると、崩れきった瓦礫の中から物音が聞こえたことに気付いた。野盗ねずみでもいるのだろうか。そう思い興味本意で覗き混んでみると、瓦礫の下に一人の子供が倒れていた。その子供は体をぴくりとも動かさず、ぐったりと地面と瓦礫の間に沈み込んでいる。だが瞼は痙攣のようにぶるぶると開閉し、口は血と涎を垂れ流しにしたまま、シーシーと息をしているのが見てとれた。乾いた血のような赤茶けた髪に、泥だらけの浅黒い肌、虚ろにこちらをみつめる金の瞳。右腕と右脚はちぎれ、焼け爛れ、瓦礫の乗ったもう半身はすっかり潰れて肉塊なっている。獣に噛みつかれた様な牙の痕が残る腹部には、ポッカリと穴が開いている。そこに数匹のねずみが群がって、子供の血肉をかじって、摘まんで、食べていた。その子供はこんな小さな動物にも抵抗することが出来ず、静かに命が尽きるのを待っているように見えた。
 そこまで観察してから見るのをやめた。生きている死体も面白いかと思ったが、動かないのでは結局死んでいるのと変わらない。そう思い踵を返した時、子供の方からまた、小さな音がした。
「ーーーー……」
 それは、人間の言葉のように聞こえた。
「ーー…ーーー……」
 蚊の鳴くような無様な音量で、僅かに、微かに、途切れ途切れに、確かにその子供は声を発していた。一体何のために?
「ーー…」
 もう一度歩み寄り、微かな鳴き声に耳を傾ける。わざわざ膝を折り、その傍らにしゃがみこみ、表情を伺ってみる。子供の口はガクガクと揺れ砕けた前歯の隙間から、微風と共に真っ赤な舌が延びているのが見えた。その舌の些細な動きを見ていると、その子供の語りかけている言葉のがわかった。
『 た す け て 』
 助けて。子供はきっとそう言っていた。一体誰に向かって訴えているのだろう。助かる道でもあると思っているのだろうか。そもそも助かったところで、どうなるというのだろう。この子供はすでに命以外の全てを失っている。されどなお助けを乞う。失った身体も、環境も、希望も、戻ってくるわけがないのに。何故尚も助かろうとすがるのか。
 そしてこの子供は一体誰に向かってすがっているのか。
 腸を貪るねずみは、子供が助けを乞う間も延々と食事を続けていた。被食者の決死の抵抗にも全く興味をしめさずに、ゴミでも漁るかのように前足を器用に動かし、肉を掻き分けている。凝視しているこちらに、気付く様子は微塵もない。
『助けて助けて助けて』
 舌の動きはどんどん小さくなっていく。前歯の間の空気の流れも、だんだんと途絶えていく。けれどその口から発せられる訴えは、どんどん強くなっていった。
『助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて』
 その虚ろな瞳の真ん中の、一番深いところに映るもの。そこに向けて、子供は訴え続けているのだ。それは一体誰だろう。
「ーーーーーーーー!!」
 乾いた喉を突き破り、大量の体液と共に、その子供は最後の大声を上げて絶命した。驚いたねずみが頬張っていた肉片を吐き出し、死体からそそくさに離れていく。ひたひたとなる小動物の足音だけがその場に残った。とても静かだ。
「本当に助けて欲しかったの?」
 尋ねても、何も返ってこない。
「助けてもらえると思ったの?」
 まだ人に頼る気力があったのか。
「神様なんて本気で信じてるの?」
 誰もがきっと首を振る。
「あんたは馬鹿だよ。本物のね。けど、運はとびきりいいみたいだ」
 瓦礫の間から死体を引き出す。そしてその心臓を抉り取る。

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