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・・基本有言不実行・戯言駄文録・・・
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01.09.21:41

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  • 01/09/21:41

05.22.06:11

自虐趣味の殺戮者-4-

   

-side AZERO-

 
 
 
よく晴れた日の午後
僕は雷の神殿の前にある電柱の下で、ひっそりと座っていた
気配を消しているため、通り過ぎる人は誰も僕の存在に気付かない
忙しなく出入りする人の流れを遠めに眺めつつ、僕は数日前のことをぼんやりと思い出していた



ここ最近、僕の体調は決して良いものではなかった
精神からくる病気だって、ディアには聞いているけれど
僕には何をきっかけにして発病するのかが、解らなかった
今もわからない
ただ、ある日突然どうしようもなく嫌で仕方なくなってくる
何もしたくなくなって 誰にも会いたくなくなって 何も考えたくなくなって
闇の神殿の一室でじっと座っていたくなった
そうしていると、僕の頭の中はからっぽになっていく
どんどん隙間が空いていって 気付いたら、真っ白な世界に僕はいた
真っ黒な視界に映る、真っ白な景色は、アゼロが遥か昔に経験した記憶の一部であった
生まれた頃から僕の心の中心に、ずっと浮かんでいるその記憶
どうしようもない虚無 果てのない孤独 終わりのない絶望
身体にたくさんのコードを繋がれ、自分の全てが数値化される
自分はもしかしたら機械で出来ているんじゃないかと思ったことがあったけれど、
それもあながち間違ってはいないんだろう
僕は無数の科学者の手によって開発が進められた、『新人類』の一人目であった
いや、零人目と言った方が正しいのか
奇跡の成功作と持て囃し、大量の人体実験の後に欠陥品として捨てられた僕は、
カウントされていないのかもしれない
身体も人格も変わってしまった今でも、僕は心の中心でみんなのことを怨んでいる
自分という失敗作を作り上げた研究者が憎い
普通に生まれて普通に過ごす、僕とは違う普通の人が妬ましい
人工生命である僕は常に劣等感に苛まれている
それでもここまで生きてこれたのは、自分が他人より優れた存在であると言う自信があったからだ
僕は完全無欠の絶対的完成品を目指して開発された、最初で最後の傑作
世界一の奇跡の産物
容姿なんていうまでもなく、身体能力も、頭脳も抜群で、あらゆる才能に溢れている
他人とは違う 自分は特別な存在だという優越感 自己愛が、僕の心を正常に保っている
何の苦労もなく、大した能力も必要とせず、ただ平凡に幸せの中にいる人達から、そうやって目を逸らしているんだ
でも、アイツだけは違った
僕の心もとない平和は、アイツとであったことで大きく揺らいだ

僕はふと立ち上がり、雷の神殿の側面を駆け上がった
小さな装飾の出っ張りを足場にぴょこぴょこ上っていく
こんなことも随分慣れたもので、僕はあっという間にいつもの窓を覗きこめるところまで辿り着いた
この窓はいつも開いている
何故開いているのかをこの建物の主に問いかければ、
『鍵をかけてもオマエはぶち割って入ってくるから、いっそかけないほうが経済的だ』
と、必ず言われる
迷惑そうで冷たく穿き捨てたような言い様だが、一方で、僕の存在を前提に考えてくれている
そんなところが嬉しくて、僕はなんどもこの窓をかち割って入室するのだ
怒って殴られることばかりだけど、怒らせるのが好きなんだから仕方ない
迷惑がってたり、嫌がってたりする彼を見るのが楽しいんだ
よく愛情が歪んでると指摘されるけど、この点に関して改善する気は微塵も無い
でも、この日の僕は少しだけ遠慮がちだった
開け放たれていた窓からそっと顔を出し、室内を覗き込む
中は相変わらずいつもと変わらぬ配色、配置、景観
いつものベッドの上で、いつもの人物が、いつもの様に寝ている
僕は窓枠に腰掛け、じっとその姿を眺めていた
僕の世界平和を一瞬で反転させた存在 破滅竜ソウド
竜であるソウドは、それ故に超自然的存在であった
それでいて僕の全てを上回る、絶対的な才能の持ち主
僕は彼の存在を知った瞬間 死にたくなった そして、大きな憧れを抱いた
僕の自己愛と自信とを簡単に打ち砕いた彼を、僕は生まれて初めて心の底から尊敬した
近くにいたくて、一緒にいたくて だから彼の側に座っていたんだ
でも、彼の側はやはり平和ではなかった
何故なら彼は、ソウドは決して完璧な存在ではなかったからだ
むしろ人より精神的に虚弱だった
僕より孤独で、遠慮がちで 罪悪感に満たされて生きていた
やがてアゼロはソウドを殺そうと思うようになった
定期的に、周期的にその衝動は今も訪れる
この前だって そうだった
でも、僕は、ネオンを殺したくない
僕はこうやって僕のために嫌々ながら窓を開けてくれるネオンを失いたくない
僕の破壊衝動を、何も言わず受け入れてくれるネオンが、
あとで不機嫌そうに許してくれるネオンが、
大好きなんだ
僕はパッと窓枠から降り、入室した
そのまま足音を立てないように、気配を消したまま近付き、彼の寝ているすぐ横までやってきた
ニヤリと効果音が出るように笑ってやる
そして僕は思いっきり寝ている彼の上に飛び込んだ
「ぐあっ!?」
わざとらしく腹部のありそうな場所に肘をぶち込んでやった
僕はケタケタ笑いながらその様子を彼の上から見下ろしていた
「相変わらずいい反応するよね」
「・・・・・・てめぇ」
ネオンは腹を押さえながら半開きの目で俺を睨みつけてくる
殺意が見受けられるけど、そんなの気にしないよ 殺すのは僕の方だからね
「おっはようネオンちゃん 俺様今日も遊びにきちゃったぜ」
そう言って僕は満面の笑顔で笑った




end



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