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・・基本有言不実行・戯言駄文録・・・
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05.22.06:09

自虐趣味の殺戮者-3-

   

-side METAL-

 


光神にそれとなく促され、一度帰還した先に目に入ったのは敬愛なる主人の無惨な姿であった
私は同行していたレクトと共に、至急主人の蘇生作業を開始した
四肢をバラバラにされ、体内の器官を掻き回され、腕の接合部の関節からは太い骨が抜き出されていた
非情なまでに惨たらしいその姿
真っ赤な血の海に眠る主人の顔は、しかし何処となく穏やかであった

 
死んだ細胞、分子、電子に神力を注ぎ、一つ一つを丁寧に、かつ急速に復元していく
しばらくして主人の身体は完全に元通りの姿を取り戻した
手馴れた作業である
私もレクトも、ダイヤでさえも 雷神の死体を処理することにはすっかり慣れてしまっている
何故こんなことが起こるのか
何故当たり前のように繰り返されるのか
何故このような危険が伴うにも関わらず、あの方との関係を断とうとは思わないのか
レクトが「私達がこのことについて干渉することは許されない」と私に指導してくれたことがある
それが何故なのか 私には解らない
しかしそれは私に人としての感覚が不足していることとは関係が無い
それぐらいは私にでも理解できた
主人以外の誰も、主人を完全に理解することなど出来ない
同じ目的でこの世に誕生した風神でさえも、解ってあげられることは出来ないだろう
私と主人とでは、見てきたものが違うのだ
まさしく圧倒的な差 一つのものを対象にした時点で発想する事象が根本的な底辺から異なっているのだ
知っているのは 主人の口から直接聞かされた想いだけ
私はその想いに真偽を問わない
否、私は全てに対して真偽を求めない 善悪ですら求めない
私は主人の道具である
主人の願いをより忠実に叶えるための、主人自身の手で目的を達成するための、手段の一つ
それが私のたった一つのあり方なのだ
武器として、道具として、無機物としてこの世に生を授けた 私の貫くべき道具としての生き様
私は主人がどんな目に遭おうとも、主人の言葉が無い限り、動いてはいけない
それを歯がゆく思ったことは一度もないし、苦痛に思ったことも一度も無い
だからこそ、主人がある日突然死体と化して転がっていたとしても、何も考えずに行動することが出来る
レクトのように冗談らしく笑いながら付き合うわけでもなく
ダイヤのように半ば呆れながら笑って付き添うわけでもなく
ただ黙々と淡々と 主人に言われた通りに行動をする
そんな私を信頼し、当たり前のように側に置き、命令してくれる主人を、私はきっと愛しているのだ

仕上げの降霊作業が終わり、主人の蘇生が完了した
しばらく経つと主人の瞼がパッと開き、むくりと起き上がった
「おはよ→ ソド様おはよ→ 目覚めはどうよ→」
レクトの場違いな目覚めの挨拶に、主人ははにかんで答えた
まるで寝起きのように瞼を擦り、一つ背伸びをして、更にはあくびまでした
「マスター 衣服が汚れてしまっておりますので早速洗濯を致します
今すぐ脱衣を開始して下さいませ」
「おぉ、そうだそうだ そういえば俺の服青かったな
解った 今すぐ脱ぐからよろしく頼む」
「ソド様この黒い染みなんなのよ→ わかんないよ→」
「あ! こら触っちゃダメだレクト 変態がうつるぞ!」
いつものなにということはない会話が展開される
そこに不自然さは一切無く
哀愁はひとかけらも転がってはいなかった

私は主人が真っ黒に汚した着物を抱え、部屋を後にした
廊下を歩いていても、神殿内には誰もいない 皆はまだ祭りから帰ってきていないのだ
後ろからレクトがふわふわと飛んできて、私の隣に漂いった
「ソド様元気になってよかったよ→」
レクトは無邪気にそう笑い、くるりと小さな身体を回転させる
この人はいつも何かしら楽しそうで、私はそんな彼女を尊敬している
「マスターは不思議な人だと・・・私は思うんだ」
私はこの時わけもなく、思っていたことをレクトに言ってみせた
レクトはコクコク頷き、私が言葉にしなかった疑問に返事をする
「ソド様はとっても不安定な神様だよ→ だから他人に自分を創ってもらわなきゃいけないんだよ→」
レクトはそう言ってニコニコ笑う
私はそんなものかと考えを改め、洗濯籠に着物を投げ込んだ

主人をマスターとして敬愛するのが私
ソウド様として好意を抱くのがレクト
雷神として崇めるのが多くの同朋達
ソウドとして関わっていくのが八神一同
そのどれでもない
主人を主人ではなく主人としてみている人は、この世に一人しかいなかった
あの人は、ネオン・ソウドという一個人は、どうしようもなく彼に依存しているのだ


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