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・・基本有言不実行・戯言駄文録・・・
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05.22.06:06

自虐趣味の殺戮者-2-

 

-side DEAR-



祭りというのは悠久の時を生きることを使命として架せられる私達にとって、非常に有意義なものである
暇というのはまことに苦痛だ 大敵以外の何物でもない
仕事みたいなものはあるにはあるのだが、部下の多い神であればあるほど、その数は減っていくことが多い
暇というのは本当にどうにもならない
わざわざ暇つぶしのために雑用仕事をしているものが出てくるくらい、何かして無い限りどうにもならない
だからこそたまのイベントというものは重要なのだ
私は皆のために日々の合間を縫って祭りの計画を立て、日々実行していく
皆が楽しそうに参加している姿を見ることには、確かな嬉しいものがある
今宵の祭りも私が催したものである
三日三晩続く大掛かりな一大イベントであり、
全てと言っていいほどの神々が仕事を放棄させられ、光の領域に集まり大騒ぎをするのだ
だが、この祭りが催される本当の理由を知るものはほとんどいない
何故ならそれは、私一人の、非常に個人的な目的のためだからである
私が生まれた頃から持っている 大きな大きな保護欲が、私にそうすることを決断させるのだ
そう、だから今 私は祭りを抜け出し、大事な人のもとへ独り走っているのだ


 真っ暗な平地を駆け抜け、私は古びた古城のような怪しい外観の建物へと飛び込んでいった
中には何もなく、ただ外装にそぐわない真新しい風味を持つ壁が、広いフロアを淡々と区切っているだけ
ほの暗く、薄暗く だが常に光を引き連れる私の目にはその景色が簡単に一望できる
「アゼロっ!!」
私は大声でその名を呼んだ だが返事は返ってこない
いないのかもしれないと思ったが、単に返事をしていないだけの可能性も十分にあった
部屋から部屋へ駆け巡り、私は大切な弟の姿を探し回った
どこにもいない、ここにもいない
やがて一つの部屋で私はとある変化を発見した
なんの柄も無い黒一色の床の上に、僅かに別の色が浮き出ていたのだ
私はその色に見覚えがあった
真っ黒だが、わずかに赤く濁った生物的なその色相
私は側に座り込み、その液体に触れてみた
水の感触とは程遠い、固形物の混ざったどろどろとした液体
隅のほうは少し固まっていて、これらが床に放たれてから多少の時間が経っていることがわかる
ポタポタと床を汚す液体・・・体液は、その狭くて真っ暗な部屋の角に向かって延びていた
後を辿って部屋の角に目をやると、そこには絵の具を撒き散らしたように、真っ黒な体液が溜まっていた
それからは肉が腐ったような、鼻につく死臭が漂い、先方までここにいた人に何かが遭ったことを明確に示唆してくれた
「やっぱり・・・そう簡単には治らないか・・・」
私はぼそりと独り言を吐いた
私はこの液体がなんなのかを知っている この液体の持ち主を知っている その人が持つ悍ましい病の現状を知っている
たった一人の理解者なのだ
あの子のためならなんだってしてあげられた
遥か昔に私のことをどこまでも信じてついてきてくれたあの子を救うためなら、なんだってしようと思えるのだ
けれど私の力だけではどうにもならない
こうやって彼が独りで傷つき何処かへ消えていくことを、私は何時も唇を噛んで見守ることしかできない
けれど、悔しがっていても仕方が無い
私は探し人であるアゼロが、危険を冒してまで向かったであろう場所へ赴くため、闇の神殿を飛び出した

私たち八神は、生まれたときから何かしらの記憶を先代より受け継いで生きていく
それはそれぞれ人によってことなる
だが、共通点はある
それは全て先代が自己の精神を保持するために必ず必要としていた大事な要素だということ
一番大切な記憶 一番辛い記憶 知っていなければならない宿命 成し遂げねばならない使命
私がこの世に三代目の光神として目覚めた時、真っ先に思い出したのは、
目の前で瞳を閉じて眠りについていた、可愛らしい少年のことであった
かけがえの無い、救世主ディアの大親友
不幸な運命を架せられながら、最後まで私一人を求めてついてきてくれた、健気で可愛らしい私だけの大事な従兄弟
当時の先端技術をもってして開発され、失敗作として世に捨てられた可愛そうな人造人間
その存在は、私の生まれ持った加護欲を独占した
実の弟の様に可愛がり、世話を焼き、溺愛した
でも彼、アゼロは何時も私ではない、どこか違うところをぼんやりと見詰めていた
私はアゼロの特別な存在にはなれないんだと、嫌というほど思い知らされた
それでもやはり彼が可愛くて、彼が私の助けもなく独り立ちしてしまった今も未だに私は心配ばかりしているのだ
だってね 言い訳のように聞こえるかもしれないけれど、アゼロの持病を知っているのは私だけなんだもの
あの子が目覚めてすぐに発病した、精神を貪る宿命の呪い
遺伝子操作によって齎された罪の具現化といえるものだった
何故被害者の筈の彼に及んでしまったのだろうかと、私は何時も嘆いている
それはこの世に神から授かったたった一つの魂に、外力を注いで屈折させた結果生じてしまったものらしい
通常肉体と精神が、お互いを支えあい平等に存在しあうことで正常を保っている生命
その調和が乱され、肉体を膨張させられた結果生じた崩壊のプログラム
精神が不安や絶望に苛まれ、小さく弱くなった時にバランスを崩して壊れだす
精神は発狂し正常を維持できなくなる
肉体は膨張し、脳が手におえなくなった細胞の管理に失敗する
すると彼の身体は生きながらにして腐敗を始め、死体の様に爛れて逝く そう死んでしまうのだ
彼は神であるが故にそれを理由にこの世から消えてしまうことはなかったが、
それ故に、一生涯、半永久的にこの病気と共存しなければならなくなった
精神が平常を保てるのならこんな苦しい思いをしないのだが、
最悪なことに、彼の魂には製作者側の意図として欠陥の仕様が組み込まれてしまっている
いつも不安定で寂しくて だからこそ私を必要としてくれたらしいのだが、無い方がよかったに決っている
私はアゼロが真人間として生きられるよう、病気を少しでも楽にしてあげられるよう、あらゆることを試し続けた
それは皮肉なことに彼を生み出してしまった罪深き科学者達に、どんどん近付くことになったのだけれど、成果はあった
私の調合した専用の安定剤はかなりの効果を持つようになった
だから今ではよほどのことがない限り発病しない程度まで辿り着いていたのだ
なのに・・・それなのに・・・それでも完治させるには至らない
私が直接差し伸べられる手はここまで
あとは彼の病状にあわせて、彼の他人には知られたくないという願いに合わせて、
周囲を彼から遠ざけることしか出来ない
無力ではない
でも
虚しい
アゼロ 俺は君を救いたいんだ

誰でもいい あの子を助けて


気付けば私は闇の領域を抜け、電の領域を走っていた
電飾の消えた真っ暗な町並みは不気味で、いたるところに恐怖に似たものが転がっている
私は連れてきた僅かな数の精霊に指示を送り、アゼロが何処かにいないかを探して回った
彼がくるところといえばこの辺りが一番それらしい
だって、あの子の今の特別は・・・
「っ! いたの!?」
私は精霊の報告を受け、急いでそちらへ走り出した
ビルの隙間を駆け抜け、何度も何度も角を曲がった先 遂にその人の姿を発見した
彼はかろうじて人の姿を保っていた
服の下から腐敗して液化した細胞がどろどろと流れ出ている
いつもは日を受け付けず真っ白な肌が焼け焦げて黒ずんでいて、見るも無惨なその姿
何回目だろうか アゼロのこんな姿を目の当たりにするのは
私だけが知っている、彼の真実
そうだ、知っているのは、私だけでいい 私だけで十分だ
私は意識の無い彼の身体を抱え込み、そっと持ち上げた
湿った衣服の重さがいつもと違うことに違和感を覚え、目を凝らすと、
服には体液より赤い、少し黒ずんだ血色の染みが広がっていた
見ると彼が横たわっていたすぐ側には大振りの刃物が転がっていた
またやってしまったんだ
そう私は心の中で呟いた
あとでそちらの方にも手配を回さなきゃいけないね
真っ赤な血に染まった彼の冷たい手を握りしめ、私はそっと歩き出した

私はあの人が、私の愛する愛しい彼を、決して裏切らないと信じていたい


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