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・・基本有言不実行・戯言駄文録・・・
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01.09.10:44

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  • 01/09/10:44

05.22.06:04

自虐趣味の殺戮者-1-

-side SOUD-

 

深夜 俺は目を覚ました
何も音が聞こえない、夜の領域内を賑わす神々は寝静まってしまったのだろうか
いつもはほのかに届く電飾の光が、今日は窓から一つも見当たらない
真っ暗だった 空を見れば月すら出ていない 珍妙な漆黒の夜
閑かと言うより、不気味と言った方がいい
そういえば今日は祭りがあるとレクトがぼやいていた気がする
きっと皆、どこかに集まっているのだろう
モントも弟の付き添いでついていったんだろう それなら月がないのも納得できる
風が無いのも、音が少ないのも、灯りがないのも きっとそのせいだ


 
真っ暗な室内で独りベッドに寝そべったまま、俺は天井らしき真っ黒の何処かを眺めていた
そんな中、一滴の液体が落ちる音がした
遠くじゃない、すぐそこだ
音のした窓際に視線を移そうとしたら、身体の上に重たい何かが落ちてきた
いや、乗りかかってきた
僅かに残った光が自分の上にある何かのシルエットを映し出す
人だ
真っ黒な人影
二つの金色が俺を凝視する
「久しぶりだな、アゼロ」
俺は仄かに笑みを浮かべ、まっすぐに彼の目を見上げる
「・・・・・・ソウド・・・」
アゼロは覇気の無い声色で、ぼんやりと呟いた
俺は何もせず、彼がこれから何をするのかを、漠然と頭の中で思い描いていた
ギシリと歯と骨が軋む音がした
「死んでくれない?」
言葉のすぐ後、俺の左肩に刃物が突き刺さった
奴の目がギラリと色を変えた
俺は痛みに顔を引き攣らせ、それでも何もせず彼を見詰め続けた
さっきまで満月のように大きく見開かれていた瞳が、今は三日月形に歪んでいる
笑ってるんだ
苦しい 痛い そう感じる俺を見て、悦んでいるんだ
ベッドまで突き刺さっているだろう凶器は抉るように傷口の中で動き回る
そうだと思ったら急に浮き上がり、もう一度少しずれた場所に振り下ろされた
その痛みに俺は遂に声をあげた
「痛い? でも、まだ足りない?」
アゼロは覆いかぶさるように俺の上に圧し掛かる
そうやってまた耳元で彼は呟き、刃物・・・恐らく大振りのナイフに両手を添えた
そして俺の胴体に、左肩から横腹まで一直線に斬り込みを入れた
血が大量に流れ出す 脳の全てが痛覚で埋め尽くされ、何も考えられなくなった
苦しみに身体を悶えさせるとすっかり血の溜まったベッドから液体が跳ね上がる
腕や顔に自分の血飛沫が当たる
血塗れて顔に張り付く長髪、ねっとりと生温い背中が不愉快で仕方が無い
しかしそれ以上に、やっぱり痛い
もがき苦しむ俺をひとしきり眺めて少し満足したのか、アゼロは先より大きな声でハッキリと声をあげた
「ざまぁみろよ人で無し! これじゃたりないんだろ? 解ってる、もっと苦しめ!!」
突き立てられたナイフが、傷口を逆走する
「ぐあっ、は・・・っ!」
刃が肉と触れ合う度に、俺は唸りに似た喘ぎ声をあげる
息がどんどん荒くなり、心臓が胸を突き破る勢いで跳ね狂う
顔面は蒼白になり、背筋にぞくりとした寒気が走る
しかし斬り刻まれた身体の裂け目は焼けるように熱い
溶岩が傷口から噴出しているよう錯覚してしまうんじゃないかと、とにかくひたすらに熱い、痛い、苦しい
「何、泣いてるの?」
気付けば両の目から涙が零れていた
アゼロが暗闇の中でクスリと笑う
パシーンッ
子気味良いおとがした
涙の伝った頬に衝撃が与えられた 手の平が打ち込まれたんだ
「涙なんて生意気だよねぇ アンタはただ啼いてくれるだけでいいんだよ」
冷たい声が投げかけられる そうはいっても涙は生理的なもの、好きで流しているわけじゃない
俺だってこんなもの、流す権利なんて無いと思っている
権利を奪うことしか出来ない俺にあるのは、きっと、義務だけだ
「アンタが・・・ソウドが泣くなんて許さない 僕だって・・・」
「・・・そうか」
オマエも泣けないんだな アゼロ
でも、じゃあ、・・・これは何だ?
さっきから俺の肌にポタポタと滴り落ちている・・・この液体は一体なんだ?
血では無いのは解っていた それとは違う臭いがするからだ
涙では無いのも、なんとなく解っていた 涙にしてはどろりとしていてねちっこい
真っ暗でそれがどんなものなのか解らないが これらはこの人から俺に向かって落ちてくる
痛みで麻痺した脳が引き起こした幻覚なのかもしれない
でも・・・
「アンタが僕より幸福だなんて認めない!!」
突然大声をあげたアゼロは、まだ真新しい腹のど真ん中にナイフをぶち込んだ
内臓が裂け、溢れた血が逆流して口から吹き出した
アゼロは狂ったように俺の腹に何度も何度も穴をあけるためにナイフを突き込む
普通の生命体なら、きっともう死んでるんだろうなと、俺はのんきに雑念を浮かべていた
俺はしぶとい 心臓を真っ二つにされても、数時間生き延びたことがあるくらいだ
その時も俺を殺したのはコイツだった
コイツは、アゼロという人物は 俺を心の底から怨んでいる
全てを持って生まれてきて、全てを捨てて生きている俺が、幸福すら見捨てて生きている俺が大嫌いなんだ
それでいて人のものは何でも奪う
それでいてただのヒトになりすましてのうのうと、なんの悪びれもなく生きている
そんな俺は、必死で何かを得ようと、真っ暗な闇の中でもがいているこの人にとって
怨むべき、呪うべき、妬むべき存在でしかない
そんなこと解ってるのに、どうして俺はまだコイツと一緒にいるんだろうな 隣に、側に いるんだろうな
「なぁ・・・ゼロ」
俺は掠れた声を投げかけた
ナイフを強く押し込んだまま、ゼロはゆっくりと顔をあげた
「まだ、やるの・・・か?」
俺の問いかけに、彼はコクリと頷いた
頷いたまま、なかなか顔を上げない
身体からナイフが引き抜かれる そこからまた血が溢れ出る
「大丈夫・・・まだ、俺、は・・・死なない、から」
「ネオン・・・」
ポタリと何かがまた落ちた 今度の之はなんだろうか
ゼロが顔を持ち上げ、俺の顔を脅えた目で見詰めている
大丈夫 俺は 死ねない
「心配、すんな・・・よ 今、に、始まっ・・・た・・・こと、じゃ・・・ない
ゼロ・・・の、思う通りには、ならな・・・い だかっ」
不意に強く抱きつかれた
こちらの傷などお構いなしに、ゼロは強く強く俺を両腕で締め付けた
「ごめん ごめんね・・・ネオンっ」
ゼロは俺を抱え込んだまま、何度も何度も謝罪の言葉を繰り返した
いつもより冷たい彼の体温が身体に伝わる
俺は回らない頭と滑稽な呂律で、その姿を笑い飛ばす
「あいかわらず・・・気前が良い、な・・・・・・・・・・・・アゼロ」
そういうと彼は俺の首をきつく締め付けた
そうだ、それでいい 俺は口から血を吐きながら、そう、声にならない声で囁いた


最期まで付き合うよ



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