01.07.11:09
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12.05.03:32
ときめきの小雨がふるの
01.13.03:20
神様の恋
祭囃子から遠く離れた森の奥、七色の花が散りばめられた若草の川辺。そこに一人のうら若き少女が経っていた。美しい恵みを籠いっぱいに抱え込み、小柄な体を懸命に伸ばして空を見上げていた。少女にはわかっていた。そこに一人の男が立っていることを。
男の長い髪が風に揺れ、少女はその姿に目を奪われる。
そして尋ねる。
「なぜ私には××××が見えるのですか?」
男は答える。
「この世の神がオマエに特別な運命を与えたからだ」
男は続ける。
「この世の神は果てしなく残酷だ。オマエに与えられた運命もまた、決して受け入れるべきではない程過酷なものに違いない。今すぐにでもここから立ち去り、全てを忘れろ。さもなくばオマエもまた、同じ運命を辿ることになる」
「構いません」
少女は一言、男に告げる。
「私は××××に出逢えたことを神に感謝しています」
少女は何もない空に向かって、一輪の青い花を差し出した。
「私は××××に恋をしてしまいました」
今思えば、それが全ての過ちだったのかも知れない。気付けば神に愛されし少女は何処かへ消え、残った男は一輪の花を握りしめ、何処か知らない大地に座り込んでいた。
神様の恋
それでも一緒にいたいと語った少女のために、男は神殺しを企てた。
12.05.05:54
オマエは誰だ?
世界の真ん中にはいつもその柱が建っていた。天を貫くように伸びた巨大な結晶を、俺達は確か「逆さ氷柱」と呼んでいた。何故そのような名前なのかは知らないし、誰も覚えていない。
あの逆さ氷柱は特別な存在だった。
「あそこに近づいてはいけない」
彼女が俺にそう言っていたのをよく覚えている。何故そんな話を始めたのだろう。彼女はとても不安そうな顔で、俺の服の端をつまみながらそう言ったのだ。「行かないでくれ」と暗に、何度も呟いていた。
この小さな世界の中で、俺達が行ってはいけない場所なんて、本当にあるのか。
「行ってはいけない」「近づいてはならない」「関わってはならない」
大人面した知識人たちは、いつもそう言ってあの場所を恐れていた。彼女もそうだった。あの人もそうだったし、アイツもそうだった。
俺だけが違っていた。だからとても気になった。かの場所に浮かび上がる恐怖の未知を、解明出来るのは俺だけであるような気がした。
だからあの日、俺は誰にも言わず、深い夜闇を一人歩き、逆さ氷柱の麓に向かったのだ。
柱の周りはクレーターのように抉れていて、さらさらとした銀色の砂がしきつめられていた。足を踏み入れると、砂は蟻地獄のように沈み始め、しずかに柱の根本へ招待してくれた。
近くで見る逆さ氷柱はひときわ大きく感じた。大樹よりも幅広く、塔よりも高くそびえる。表面はささくれだっており、鋭利な突起がそこら中に張り付いている。触るとひんやり冷たい。水の中に手を入れるような、結晶の奥に吸い込まれるような幻想を見る。
「近づくな」
逆さ氷柱はそう言っていた。結晶の棘が人を拒絶する。ちくりと手の平に刺さり、触れるものを傷つける。けれど行かなくてはならない。その結晶の深い青が、俺には人の涙のように映ったからだ。
ぽっかりと空いた横穴を見つけて中に入る。ランタンの灯りで照らすと、横穴は当然のように奥深く続いていた。結晶に囲まれた薄暗い回廊を巡り、深く深く沈んでいく。どれくらい歩いただろう。気付けば辺りには自分しかなかった。
足場は大理石のように平らで下り坂。足音はしない。灯りの火がちりちり燃える。
ふと立ち止まり、灯りに照らされて浮かび上がった自分の手を、じっと見る。ぎゅっと握り、元に戻す。大丈夫だ。不安などどこにもない。
一息ついて顔をあげると、いつのまにか目の前に大きな扉があった。
手をふれると扉はあっさり開いてしまう。扉の向こうには閉鎖的な空間。どこかに光源があるらしく、ほんのり明るい。ランタンの光が異物となって淡い光の中に差し込んだ。
中は意外と広い。何か靄のようなものに遮られているのか、奥は照らしても何も見えない。入ってみると、扉はごく自然にばたんと閉じてしまった。鍵の様なものは無かった。
一歩踏み出すと、突然部屋の奥が鮮明に映し出された。白く、青く、黄金色の光が急に目に差し込んできた。まるで誰かの訪問を待っていたかのように。
光に歩み寄ってみると、それがとある結晶の塊にランタンの光が反射しただけだと気づく。結晶の塊は、何もない空間の真ん中にぽつんとあった。誰かが何かのために置いたのだろう。結晶は光を受けて明るく輝き、その下に敷かれた銀色の床が透けて見えた。
その輝く結晶の表面に、何かが映り込んでいるのに気付いた。
それはよく知る人物だった。見知った顔立ち、見知った体格、見知った表情。けれど、なんだろう? こんな人物になんて会ったことがない。
「オマエは誰だ」
気付けば俺は、結晶に映る自分の姿に向かって、そんなことを言っていた。
「オマエは誰だ?」
結晶の中の俺がそんなことを言っていた。
あの逆さ氷柱は特別な存在だった。
「あそこに近づいてはいけない」
彼女が俺にそう言っていたのをよく覚えている。何故そんな話を始めたのだろう。彼女はとても不安そうな顔で、俺の服の端をつまみながらそう言ったのだ。「行かないでくれ」と暗に、何度も呟いていた。
この小さな世界の中で、俺達が行ってはいけない場所なんて、本当にあるのか。
「行ってはいけない」「近づいてはならない」「関わってはならない」
大人面した知識人たちは、いつもそう言ってあの場所を恐れていた。彼女もそうだった。あの人もそうだったし、アイツもそうだった。
俺だけが違っていた。だからとても気になった。かの場所に浮かび上がる恐怖の未知を、解明出来るのは俺だけであるような気がした。
だからあの日、俺は誰にも言わず、深い夜闇を一人歩き、逆さ氷柱の麓に向かったのだ。
柱の周りはクレーターのように抉れていて、さらさらとした銀色の砂がしきつめられていた。足を踏み入れると、砂は蟻地獄のように沈み始め、しずかに柱の根本へ招待してくれた。
近くで見る逆さ氷柱はひときわ大きく感じた。大樹よりも幅広く、塔よりも高くそびえる。表面はささくれだっており、鋭利な突起がそこら中に張り付いている。触るとひんやり冷たい。水の中に手を入れるような、結晶の奥に吸い込まれるような幻想を見る。
「近づくな」
逆さ氷柱はそう言っていた。結晶の棘が人を拒絶する。ちくりと手の平に刺さり、触れるものを傷つける。けれど行かなくてはならない。その結晶の深い青が、俺には人の涙のように映ったからだ。
ぽっかりと空いた横穴を見つけて中に入る。ランタンの灯りで照らすと、横穴は当然のように奥深く続いていた。結晶に囲まれた薄暗い回廊を巡り、深く深く沈んでいく。どれくらい歩いただろう。気付けば辺りには自分しかなかった。
足場は大理石のように平らで下り坂。足音はしない。灯りの火がちりちり燃える。
ふと立ち止まり、灯りに照らされて浮かび上がった自分の手を、じっと見る。ぎゅっと握り、元に戻す。大丈夫だ。不安などどこにもない。
一息ついて顔をあげると、いつのまにか目の前に大きな扉があった。
手をふれると扉はあっさり開いてしまう。扉の向こうには閉鎖的な空間。どこかに光源があるらしく、ほんのり明るい。ランタンの光が異物となって淡い光の中に差し込んだ。
中は意外と広い。何か靄のようなものに遮られているのか、奥は照らしても何も見えない。入ってみると、扉はごく自然にばたんと閉じてしまった。鍵の様なものは無かった。
一歩踏み出すと、突然部屋の奥が鮮明に映し出された。白く、青く、黄金色の光が急に目に差し込んできた。まるで誰かの訪問を待っていたかのように。
光に歩み寄ってみると、それがとある結晶の塊にランタンの光が反射しただけだと気づく。結晶の塊は、何もない空間の真ん中にぽつんとあった。誰かが何かのために置いたのだろう。結晶は光を受けて明るく輝き、その下に敷かれた銀色の床が透けて見えた。
その輝く結晶の表面に、何かが映り込んでいるのに気付いた。
それはよく知る人物だった。見知った顔立ち、見知った体格、見知った表情。けれど、なんだろう? こんな人物になんて会ったことがない。
「オマエは誰だ」
気付けば俺は、結晶に映る自分の姿に向かって、そんなことを言っていた。
「オマエは誰だ?」
結晶の中の俺がそんなことを言っていた。
08.05.21:57
神頼み
03の散歩小説
グロテスクな描写が満載かもしれない(むしろそれしかないかもしれない)
少し前に書こうとして止まっていた作品をサルベージしてきました
なので突然終わります
出来れば完成させたいなぁって思ったのですが、何を思ってこんな文章を書いたのか思い出せません
なんだったんだろう……?